2023/03/16

臨床医が紹介する日本のスタートアップ技術(第27回)

睡眠の不安をなくし、持続的に発展する社会を創る、ニューロスペース

日本, 臨床医, 患者データ・疾病リスク分析, 睡眠障害

(出所:Shutterstock)

構造的な解決をはかる睡眠改善プログラムを提供

近年、企業の健康経営という言葉をよく聞くようになりました。以前の記事で「Carely」のサービスをご紹介した際、健康経営について説明したことがありますが、経産省のホームページでは健康経営を以下の通り説明しています。

「健康経営」とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。企業理念に基づき、従業員等への健康投資を行うことは、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待されます。1)

この健康管理や健康投資の中で、睡眠改善は重要な事項と言えます。

診療していると、受診された患者さんが、本来の診療内容とは関連なく、「夜眠れないんですよね」とか、「中途覚醒しちゃって」というような睡眠障害の訴えがあり、睡眠に悩みを抱えている患者さんが多いと感じます。もちろん、不眠症だけでなく、なかには睡眠時無呼吸症候群なども隠れていることがあり、必要に応じて睡眠時の酸素飽和度の測定、ポリソムノグラフィによる精密検査により診断、治療を行っています。

睡眠には、心身の疲労を回復する働きがあります。睡眠時間の不足や睡眠の質の悪化は、生活習慣病のリスクにつながることがわかってきました。そのため、厚労省は、「健康づくりのための睡眠指針2014」に、「睡眠12箇条」*1 の解説を示すなど 2)、睡眠対策情報を掲載し、睡眠の重要性を唱えています。

(出所:Shutterstock)

このように、睡眠の改善が注目されている中で、テクノロジーで睡眠の課題を解決するスリープテック事業を展開しているのが、株式会社ニューロスペース(以下、ニューロスペース)です。

同社の調査により、ビジネスパーソンはどの年代も約6割が自身の睡眠に不満を抱えていることがわかっています。働く人が心身ともに健康に働き続けていくためにも、睡眠課題を理解して適切な改善策を取っていく必要があると言えます。3)

これに対するソリューションとして、ニューロスペースでは、睡眠を軸とした企業の健康経営支援を行っており、以下3つのサービスを展開しています4)

①    企業に対する「睡眠セミナー」開催
②    「パーソナライズスリープチェック 『My Sleep』」
③    「睡眠改善プログラム」

多様なテーマの睡眠セミナー(出所:株式会社ニューロスペース)

⓵の「睡眠セミナー」ではこれまで100社以上、2万人以上の従業員に提供し、高い満足度を得られているようです。人数制限なく1回60分30万円と価格帯の提示もされているので、企業側からすると見積りイメージがつきやすいです。シフト勤務に合わせたアドバイスやFitbitなどのスリープテックの活用法、動画コンテンツなど多方面からのアプローチが有用だと感じます。

⓶の「パーソナライズスリープチェック『My Sleep』」では、従業員が5分のアンケート回答から一人ひとりの状態を踏まえた快眠アドバイスを伝えてくれます。動物に見立ててその結果をレポートにしてくれるのも、親しみを感じます。またこの睡眠レポート実施後の生活習慣状況や課題傾向の統計データも企業にフィードバックしてくれるので、どこをどう改善すればよいのかを経営側はつかみやすくなります。

⓷の「睡眠改善プログラム」では、腕時計型計測デバイス「Fitbit」をつけて寝ることで日々の睡眠状態がわかり、その分析した結果をレポートにしてくれます。さらに専門スタッフによる介入もあるので、自分ひとりで持続するのが難しい方には効果的であり、充実したプログラムのようです。

パーソナライズスリープチェック「My Sleep」(出所:株式会社ニューロスペース)

私自身、睡眠にはとても関心があり、スリープテックであるOura RingやApple Watchを着けて寝ることで、その睡眠状況の客観的データを取っています。自分のコンディションをきちんと把握することは大切です。客観的なデータを見ることで、「今日は早めに寝ようかな。最近少し休めていないな。」などと自分の睡眠状況から健康意識が向上したと感じています。ニューロスペース社のサービスを利用することで、ユーザーは睡眠の客観的なデータを検証し、睡眠を改善、健康意識を向上させることになると思われます。

ニューロスペース社は、企業にしっかりとアプローチすることで健康経営を睡眠という視点からサポートしており、既に様々な企業への実績があります。

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