2023/05/25

ヘルスケアの現場から考えるデジタルヘルス(第10回)

日本最大級のアトピー性皮膚炎患者向けアプリ「アトピヨ」

皮膚科/皮膚疾患, 医療コミュニケーション支援, 画像技術, デジタルセラピューティクス, 日本, 疾病管理・患者モニタリング, 臨床医

患者目線で作られたアトピー患者のためのサービス

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(出所:Shutterstock)

近年増加しているアトピー性皮膚炎患者
厚生労働省の患者調査では、アトピー性皮膚炎患者はここ30年で2倍以上増加し、総患者数は50万人を超えています。1) アトピー性皮膚炎は幼児期・小児期の発症が一般的で、その後も寛解・再発を繰り返すことが多い疾患ですが、頻度は低いものの思春期や成人で発症するケースも見受けられます。2)

外来で患者を診察していると、自分の症状の程度を正しく評価できていないケースが意外と多いと感じます。特に慢性化すると、以前と比較しどのくらい変化しているのか、今の皮膚の状態はどのくらい重症なのかを実感するのが難しくなります。また、アトピー性皮膚炎は治療の継続が重要であり、患者自身のモチベーション維持のために、症状の経過を確認することが望ましいです。

(出所:アトピヨ合同会社)

これらの課題に対するソリューションとして開発された、アトピー見える化アプリ、「アトピヨ」についてご紹介します。
アトピヨ合同会社が提供している「アトピヨ」は、皮膚症状の「画像」を投稿することで、症状を記録・共有できる日本初のアプリです。同社代表の赤穂亮太郎氏は、アトピーを患った経験より、アトピーを発症し悩んでいる方々の早期回復サポートになることを目指し、自らこのアプリを開発しました。その革新的なサービスから、様々なアワードを受賞しており、本年は「日本のサービスイノベーション2022」*1 にも選出されています。3)

アトピヨ合同会社代表 赤穂亮太郎氏
(出所:アトピヨ合同会社) 

症状を画像で比較
「アトピヨ」は23,000ダウンロード(2023年3月現在)を誇る、アトピー性皮膚炎患者の日本最大級のコミュニティです。利用料は無料で、アトピー特有の皮膚症状を匿名で記録・共有できます。総画像数53,000枚のうち9,000枚もの画像が公開されており(2023年3月現在)、様々な重症度の画像を見ることができます。

患者同士で皮膚症状を直接見せ合う機会は少ないと思います。このアプリでは同じような皮膚症状の患者と交流することで仲間意識を高め、治療に有用な情報を共有することができます。また、皮膚症状を一般の方がスコア化するのは難しいので、アプリ上で部位や症状別に簡単に検索できる画像の中から、直観的に似た症状を見つけられるのは画期的です。

(出所:アトピヨ合同会社)

治療のアドヒアランス向上にも
「アトピヨ」では、四肢・顔面など部位を写真で撮るだけで、部位別の症状を記録できます。また、食事や薬の内容も画像で保存し、日記のように使えます。非公開設定にすることで、アプリ上で自分だけの記録として画像を保管し、症状経過を一目で確認できます。

治療で症状が改善しているのを実感できれば、モチベーションも高まります。評価の難しい痒みについても5段階評価で記載できるので、経時変化を簡単に追うことができます。さらに、日記のように毎日の習慣にすることで、外用忘れも防げます。

(出所:Shutterstock)

不安の多い小児の治療に
子を持つ親にとって、子育てに不安は付き物です。しかし、治療に不安や疑問があったとしても、子供を連れて病院を頻回受診するわけにはいきません。とはいえ、忙殺される毎日の生活で、症状経過を逐一覚えている事も難しいでしょう。また、小さい子供であれば、処方通りに塗らせてくれない、なんてことも良くあります。
「アトピヨ」では、そういった毎日の症状の経過や外用の程度を細かく記録できるので、親自身が増悪因子に気付きやすいでしょう。また、ある程度の年齢の子供であれば、画像を見せて経過を説明することもできます。さらに、同じ境遇の親同士で情報交換できるのも魅力的です。

(出所:Shutterstock)

医師の立場にも有用
診察する医師側の立場からも、患者の「アトピヨ」に記録されている写真や外用記録は治療の参考になります。受診間隔が空いてしまう患者や、症状に波のある患者の経過を画像で見ることで、現時点での症状だけでなく過去の症状に対しても振り返って、治療についてアドバイスすることができます。また、毎回診察でカルテに写真を残すわけではないので、悪化の誘因や外用方法の癖など、患者ごとの特徴に気づき、最適な治療を提案するきっかけにもなります。

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