2023/06/01
臨床医が紹介する日本のスタートアップ技術 (第31回)
自分らしく彩りのある人生を支える、NTT PARAVITA 【後編】
臨床医, 疾病管理・患者モニタリング, 患者データ・疾病リスク分析, 日本, デジタルセラピューティクス, 睡眠障害
NTT PARAVITAの持つ独自性
ICTを活用し、睡眠課題に取り組むNTT PARAVITA株式会社(以下、NTT PARAVITA)のサービスについて、前編で紹介いたしました。後編では、同社の独自性や今後の事業展開等について、パラマウントベッド株式会社(以下、パラマウントベッド)にてNTT PARAVITAの事業支援を行っている、水上渉氏へインタビューした内容をご紹介いたします。
Q1. 大阪大学精神医学教室では「Society 5.0事業」を推進する中で、睡眠センサーを活用した研究が端緒と伺っていますが、まずはこの研究についてご説明いただけますでしょうか?
水上氏 『堺市にて大規模に実証しております「ねむりの見守りサービス」がこれに該当いたしますが、堺市、大阪大学、NTT西日本(西日本電信電話株式会社)、NTT PARAVITA、パラマウントベッドの5社により社会実証を展開しております。大阪大学は「Society-5.0」の研究チームとしてご参画してくださっています。(研究チームは精神科/池田先生、老年看護/山川先生を中心としたチーム)
堺市のプロモーションでご希望のあった約300名(研究除外者があり260名)の一般市民(高齢者独居者、もしくは高齢老老世帯に限る)を対象に睡眠センサーを無償で3か月間貸し出し、NTT PARAVITAに所属する看護師/保健師が毎月睡眠データをもとに生活改善アドバイスを提供するものです。これにより高齢者の健康状態変化、生活行動変容がどの程度起きて、その効果はどうだったのかを検証しております。睡眠データは介入群でかなり改善(アテネ睡眠スコア*1 による自覚睡眠の数値改善)がみられておりますが、まだ研究成果としては大阪大学研究チーム内で解析中です。この研究により、睡眠改善アドバイスが健康促進(介護予防効果なども)に効果があるのか、社会経済的なコスト削減効果はあるのか、などをエンドポイントとして考えております。』
Q2. NTT PARAVITAの目的と直近の目標を教えていただけますでしょうか。
水上氏 『この堺市の結果を元にして、ポピュレーションアプローチであるものの比較的ハイリスク者である独居/老老世帯の健康対策として各自治体にサービスを提供し、「地域支援事業」「一般介護予防事業」などの枠で自己負担の保険外サービスではありながら、自治体の補助を得てサービス普及を全国に目指したいというのが事業者側の希望です。
この他、天理市・枚方市おいて一般介護予防事業での受託ができましたのでこれを模範としつつ、堺市の実証を強力なエビデンスとして、「高齢者政策として自治体を通じた新たな睡眠サービスを普及」することが目標であります。
また、現役世代向けには、同じく3ヶ月の睡眠改善サービスを弊社所属の睡眠パーソナルトレーナーと伴走する形でサポートする「ねむりのあれこれ」を提供しています。健康経営を目指す企業や、特定保健指導の成果を上げたい健保組合様にこのサービス提供を進め、現役世代からのメタボ対策を含めた健康サービスとして展開し、皆様が健康になるよう事業拡大したいと考えております。』
Q3. 様々なセンサー技術や発想のプロダクトがスリープテックに参入していますが、NTT PARAVITAの独自性はどこにあるとお考えでしょうか?
水上氏 『圧倒的なスピードで、Appleを代表とするWrist型睡眠センサーや、Oura-Ringなどの指輪型センサーが市場で普及しております。高齢者においてはこれら「装着型」は”受け入れ”は良くはなく、長期的な生活行動変容介入の必要性が高いことからも、マットの下に設置するパラマウントベッド製シート型睡眠センサー「Active Sleep ANALYZER」は非常に受け入れがいいため、特に自治体/高齢者サービスではこのセンサーの強みが発揮されています。
睡眠改善までのプロセスとして、以下の4段階があります。
「①睡眠の関心」➡「②睡眠知識獲得」➡「③睡眠可視化」➡「④睡眠改善」
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