2023/07/25
米国eHealthジャーナル第92号
FDA、Owletの赤ちゃんモニタリングシステムBabySatを承認
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赤ちゃんの心拍数や血中酸素飽和度を測定する処方箋スマート靴下
スマート靴下を利用した赤ちゃんモニタリングシステムを販売するユタ州リーハイ拠点のOwletは6月20日、同社の処方箋赤ちゃんモニタリングシステム「BabySat」がFDAから承認されたと発表した。BabySatは、赤ちゃんの心拍数や血中酸素飽和度(SpO2)が所定の範囲から外れて異常値を示した場合に、両親に警告することを目的としている。Owletは2022年10月に510(k)経路でFDAにBabySatの承認申請を行っていた。
2013年設立のOwletは、赤ちゃん向けのスマート靴下の開発で知られる企業だ。睡眠中の赤ちゃんに履かせておくと、心拍数や血中酸素濃度などをモニタリングし、ブルートゥース技術でデータを専用のスマートフォンアプリに送信する。Owletは短期間で大きく成長し、2021年7月には特別買収目的会社(SPAC)であるSandbridge Acquisitionとの合併によりニューヨーク証券取引所(NYSE)への上場を果たした。しかし、同社の株価は2021年2月には最高値の10.77ドルをつけたものの、それ以降は株価が低迷し、2023年に入ってからは1ドル未満での取引が続いている。Owlet は2015年の発売から100万足以上のスマート靴下を販売してきた実績を持つが、2021年10月にFDAから警告状を受領したことを受け、翌11月に製品リコールを行ったことが大きな打撃となった。警告状は、Owletがスマート靴下を「診断ツール」として販売していることを問題としていた。診断ツールの販売には、510(k)申請経路によるFDA承認の獲得が必要となるが、Owletのスマート靴下は承認を取得していなかった。
Owletはその後2022年1月に、赤ちゃんと両親のよりよい睡眠をサポートするモニタリングシステム「Owlet Dream Duo」を発売。その後3月には5歳未満もしくは体重55ポンド(約25キロ)までの小児のよりよい睡眠をサポートする最新のモニタリングシステム「Owlet Dream Sock Plus」を発売した。いずれも、処方箋を必要としないOTC製品である。「Owlet Dream Duo」は、赤ちゃんと両親がより質の高い、長い睡眠時間を得られるよう支援するシステムで、「Dream Sock」と呼ばれるスマート靴下、専用のコンパニオンアプリ「Dream App」、HDビデオカメラ、より良い睡眠を得るためのデジタル・コーチングプログラムで構成されている。赤ちゃんの睡眠中の様子を全体的に捉える1,080pのHDビデオと、バイタルサインを捉えるスマート靴下により、目覚め、心拍数、動きのスコアから赤ちゃんの睡眠の質を把握できるほか、寝室の温度や湿度、騒音レベルといった環境データも確認できる。こういったデータは、赤ちゃんの睡眠トレンドを把握して寝室環境の最適化を図るために活用することができるという。
Owletは2023年3月の決算発表(2022年第4四半期および通年決算)で、FDAに新たな承認申請を行うために2022年下半期には経費の削減に努めたと述べている。同社では、この動きを黒字化へのステップにつなげようとしている。
ベビーケア分野のイノベーションが重要なのは、ケア提供者や医療従事者が直面する最大の問題のいくつかがまだ解決されていないためだ、とOwletは述べている。例えば、4歳までの乳幼児受診件数は年間約9,200万件にのぼり、病床の空き状況や医療の質を著しく圧迫している。BabySatは、このような課題を解決するための一歩として、医師の監視のもと、医療レベルの乳幼児モニタリングをリアルタイムで家庭内に導入するものだ。両親などのケア提供者が医師の監視のもとで安心して在宅でベビーケアができるようになり、医療資源の負担軽減にもつながる。
BabySatは米国でのみ販売される。Owletでは2023年中の発売を予定している。
(了)
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