2022/04/28
デジタルヘルス討論会
現役臨床医によるオンライン座談会 【第2回】
ウェアラブル, 医療コミュニケーション支援, テレヘルス, AI技術, 画像技術, 臨床医, デジタルセラピューティクス
「医療現場で進行しているデジタル技術活用について」 中編
現役臨床医の先生方にデジタルヘルスに関して、現状や今後期待すること等について意見交換を行っていただく、現役臨床医のオンライン座談会の2回目をお送りいたします。今回は、前回の座談会の内容に関して、さらに質問を投げかけました。これに対して、現役臨床医師の3名が、本音で語っていただいた内容をご紹介いたします。
参加医師:
ファシリテーター:LSMIP事務局スタッフが担当。
ファシリテーター今回は、前回の座談会での先生方の討論を伺った上で、それに対する質問があります。これらの質問を中心に、意見交換を行っていただきたいと思います。
AI診断普及への課題とは
ファシリテーターそれでは最初の質問です。画像診断をはじめ、AI等を活用した診断はブラックボックス化して、医師が説明できないということを聞いたことがあります。診断に対して誰が責任を負うかというお話がありましたが、その点もAI診断普及への課題でもあるのでしょうか?米国ではいくつかAIアルゴリズム診断がFDA認可を取っているようですが、日米の考え方の違いもあるのでしょうか?
ドクター心拍 医師自体がAIアルゴリズムへの知識を有していないということも課題かと思います。一方で技術者も医療を知らないという背景もあり、お互いが寄り添いながらの開発運用が良いのかなと思いますが…。
DIO これに関しては、例えば現時点では機序を説明できない疾患や、機序を説明できない薬剤なども、だいぶ少なくなってきたものの、まだ存在すると思います。医学の研究では、そういったものの機序を明らかにするような研究もあれば、観察研究というものもあり、これは「Aという介入とBという介入の結果を見て、理由は分からないけれどもAの方が効果がありそうだ」というようなものですね。そのため、深層学習で診断へ至る機序が分からない、等に関してはおそらく大きな問題にはならないのではないでしょうか?それが明らかになるような研究は活発になりそうですが(笑)。
「診断に対して誰が責任を負うか」については悩ましい問題かもしれませんが、現状では基本的に診断医が…という流れになると思います。現時点ではそこまで議論が至っておらず、そもそも深層学習を活かすという項目自体が、日本ではまだ議論にあがっていないように感じます。
ファシリテーター日本でまだ議論に上がっていないのは、現状必要が無いからなのでしょうか?
DIO どちらかというと、必要が無いというよりは、深層学習の医療への応用がどの程度出来るか等、を僕も含めて、あまり分からないというのが現状だと思います。そういう意味では先程、心拍先生が仰っていましたように、医療者と技術者の結びつきが重要になるのかなと思います。
ファシリテーターなるほど、それは今後注目すべき課題ですね。技術者と医師とが話し合い、理解する事が必要ですね。
では、別の質問に移ります。
服薬アドヒアランスと医療へのアプリ導入の現状
ファシリテーター服薬アドヒアランスは医薬品の有効性を高めるうえでも製薬企業の課題でもあります。服薬アドヒアランスアプリはいくつも米国では市場に出ており、製薬企業の事業でもあります。日本でも昨年、薬剤師が患者の服薬をフォローすることが義務化されたこともあり、非製薬企業数社が服薬アドヒアランス支援サービスを始めています。服薬アドヒアランスのためのデジタルツールは病院内では話題になっていませんか?
ドクター心拍 実際にデジタルツールを用いた服薬アドヒアランス支援は聞いたことないですね…。最近自身の内服している薬の情報をアプリに入れている患者さんは増えた印象ですが、まだまだその程度でしょうか。禁煙治療用アプリのCureAppでは、モチベーションを保つために禁煙外来の間の期間にも働きかけるようなことをしていたかと思いますが、それが現状かなり最先端ではあると思います。
ファシリテーターなるほど、アプリを治療に取り込んでいるケースはあまり多くないようですね。
ドクター心拍 おそらく、CureAppの治療用アプリは保険適用となった初の治療用アプリですね。
Dr. KOTATSU まだ(保険適用となった治療用アプリは)ほとんどないですね。糖尿病領域ではBlueStarがCureAppに続きそうですね。
ドクター心拍 CureAPPの高血圧治療用アプリは確か、治験が終わったと聞きましたね。
(CureAppの高血圧症向け治療用アプリは、2022年3月9日に 薬事・食品衛生審議会プログラム医療機器調査会において、本治療用アプリの薬事承認が了承された。*¹)
糖尿病分野 (のデジタル治療) は進みそうですよね。
Dr. KOTATSU 糖尿病領域で、すでに承認されている医療機器に後付けで連携できるアプリはいくつかあります。LifeScan Japan社のOneTouchシリーズ自己血糖測定器は、「OneTouch Reveal」アプリ*²と同期し、平均血糖値、食事摂取量、薬の服用量、運動データを追跡可能。同様にRoche社のアキュチェックシリーズの血糖自己測定器*³も、アプリ「mySugr」*⁴に接続可能。あと、Medtronic社もたしか連携アプリ(「ガーディアン™コネクト」*⁵アプリ)がありました。つまり、今すでに承認されて、市場認知を得ている医療機器と親和性の高いアプリをドッキングしているイメージです。
ファシリテーター承認を受けた医療機器とアプリとのドッキングによって医療で利用されるとなると、アプリのデジタルヘルスは広がりを持てそうですね。
Dr. KOTATSU また、海外ではライフスタイルアプリなどがあります。MyFitnessPal*⁶、Glucose Buddy*⁷、Meal IQ*⁸、Diabetes Connect*⁹、Diabetes:M*¹⁰、Beat Diabetes*¹¹ など、これらはざっくり言えば、いまよくある運動や食事のコーチングをするアプリに、血糖値の記録ができるようになっているものです。
「FreeStyleリブレ」であれば、センサーと連動する「リブレLink」なるアプリは出ており、外来で患者さんのスマホを見ながら診察というのはあります。今までは、患者さんのセンサーをもらって、病院のパソコンにつないで病院のPCのアプリから見ていたんですけど、そこがすごく楽になってますね。
ドクター心拍 「リブレ」は結構画期的ですよね。
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