2022/11/22
米国eHealthジャーナル第77号
ガイドラインを遵守したAI/ML基盤治療介入の臨床試験は僅か
ハーバード大学医学部の研究班による系統的文献レビュー
人工知能(AI)や機械学習(ML)基盤のアルゴリズムを採用する治療介入を検証した臨床試験の系統的文献レビュー「Randomized Clinical Trials of Machine Learning Interventions in Health Care, A Systematic Review」が9月29日付でJAMA Network Openに掲載された。ハーバード大学医学部の研究者が率いる研究班は、国立衛生研究所(NIH)や国立癌研究所(NCI)からの研究グラントを活用し、AI/ML基盤の治療介入の無作為化臨床試験(RCT)41件を精査した。
それによると、AI/MLを採用した医学的治療介入を検証する臨床試験のために開発されたガイドラインである「CONSORT-AI(Consolidated Standards of Reporting Trials – Artificial Intelligence)」を完全に遵守している研究は1件もなかった。なお13件のRCTは、11項目からなるCONSORT-AI基準のうち少なくとも8項目を満たしていた。
41件のRCTのうち、39%は昨年発表されたばかりで、半数以上が単一施設で実施されていた。15件のRCTが米国、13件が中国で実施されていた。複数の国で実施されたRCTは6件だった。人種や民族のデータを収集したRCTは11件のみであった。
CONSORT-AI基準のうち、質の低いまたは不適切な入力データの排除、パフォーマンスエラーの分析、コードまたはアルゴリズムの利用可能性に関する情報の記載、といった特定の項目で非遵守の割合が多かったことを指摘した。
「この系統的レビューでは、開発中の医療用AI/ML基盤アルゴリズムが多数あるにもかかわらず、これらの技術に関するRCTがほとんど実施されていないことが分かった。発表されたRCTのうち、CONSORT-AIの遵守度合いには高いばらつきがあり、また、被験者の多様性も確保されていなかった。これらの知見は注目すべきことであり、今後のRCTデザインおよび報告において考慮されるべきである」と研究班は述べた。
研究者らは、今回の系統的文献レビューにはいくつかの限界があることを認めている。まず、今回のレビューでは、臨床意思決定に直接影響を与えるAI/MLツールを評価するRCTのみを対象としている。今後、ワークフローの効率化や患者の層別化を目的とするものなど、より広い範囲の治療介入についても研究する余地がある。また、レビューでは2021年10月までのRCTしか評価しておらず、新たなAI/ML介入が開発・研究されるにつれ、さらなる検証を重ねていく必要がある、としている。
(了)
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