2022/12/13
米国eHealthジャーナル第78号
FDA、RWE活用支援プログラムを開始
患者データ・疾病リスク分析, FDA, 行政・規制ニュース, ジャーナル第78号
医薬品・医療機器開発企業から提案を募集
FDAは10月19日、「Advancing Real-World Evidence Program(以下、Advancing RWE)」の開始を発表した。このプログラムは、既存製品の適応拡大や市販後試験においてFDAが求める要件を満たすリアルワールド・エビデンス(RWE)を得るためのアプローチを向上させることを目的としている。2022年9月末に失効した「処方箋薬ユーザーフィー法(PDUFA)」の再承認を認める法律「PDUFA VII」が9月30日に成立したことを受けて実施される。ユーザーフィー法は、医薬品や医療機器等の承認審査に必要な諸費用を申請企業から手数料として徴収できる権限を FDA に付与する時限法で、これまで法成立後5年ごとに改正・再承認され、審査官の増員や各種審査の財源に充当されてきた。
Advancing RWEは任意参加型のプログラムで、期間は2023年度から2027年度まで。治験開始申請(IND)の提出前あるいは提出段階に医薬品や医療機器候補を持つ開発企業から「RWE提案書」を募集し、その中から参加企業を選出する。提案が採用された企業は臨床試験のプロトコル開発や試験実施の前に、製品開発におけるRWEの利用可能性についてFDAと協議することが可能となる。協議にはFDAから医薬品評価研究センター(CDER)あるいは生物製剤評価センター(CBER)の担当者が参加し、癌を適応症とした製品の場合はオンコロジー・センター・オブ・エクセレンス(Oncology Center of Excellence、OCE)の担当者が加わる。
FDAとの協議に基づき決定された臨床試験デザインは、FDAが作成するガイダンスやワークショップの資料として匿名で公表される可能性があり、参加企業はこれに合意する必要がある。
RWE提案書の提出期日は毎年3月31日と9月30日で、6カ月を1サイクルとして、提案内容や試験デザイン、データソース、対象疾患の多様性などを考慮し、2023~2024年度には1サイクルあたり1~2件、2025~2027年度には同1~4件の提案を採用する。FDAは提案の提出期日から45日以内に採用を通知し、同75日以内に1回目の協議を実施する。企業から要請があれば最大3回のフォローアップ協議を行うこととし、各要請から45日以内に場を設けるとした。
FDAは同日、臨床試験データ以外のエビデンス収集に向けた取り組みの一環として、「複雑かつイノベーティブな試験デザイン(Complex Innovative Trial Designs、以下CID)」を検討するプログラム(以下、CID協議プログラム)を2027年度まで継続すると発表した。CID協議プログラムはPDUFA VIに基づき2022年度末までの予定で試験運用が実施されていた。CIDは、試験開始時にすべての試験デザイン特性を決定する従来の方法とは異なり、試験開始時には「存在しない情報」を調整する「アダプティブ・デザイン」を採用したデザインを指す。医薬品開発に利用可能なCIDアプローチを提案する開発企業に早期段階でFDAと協議する機会を与えるとともに、これまで利用されたことのないアプローチを含む新規試験デザインを周知することで、イノベーションの促進を図ることを目的とする。
製薬企業からCID提案を募り、四半期ごとに案件を選出し、各年度最大8件の採用を見込む。採用した臨床試験デザインは、FDAが作成するガイダンスやワークショップの資料で公表される可能性がある。
(了)
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