2022/12/27

米国eHealthジャーナル第79号

テレヘルスによるフォローアップは、ED再受診を増加させる

研究・調査, ジャーナル第79号, テレヘルス

UCLAの研究者らによるレトロスペクティブ・コホート研究

JAMA Network Openに10月25日付で掲載された研究「Association Between In-Person vs Telehealth Follow-up and Rates of Repeated Hospital Visits Among Patients Seen in the Emergency Department」によると、救急治療(ED)の受診後に、テレヘルスによるフォローアップを利用した患者群は、対面診療によるフォローアップを受けた患者群と比較してED再受診率が高かった。

UCLAの研究者らは、2020年4月から2021年9月にかけて、カリフォルニア州ロサンゼルス拠点の学術医療システム内にある2つのEDセンターで提供された、約1万7,000件の受診に関する電子医療記録(EHR)データを分析し、レトロスペクティブ・コホート研究を実施した。最初のED受診から14日以内にプライマリケア医とのフォローアップ予約を取っている患者を分析の対象とし、フォローアップの予約から30日以内のED再受診の割合を主要評価項目、また、同じ期間内の入院または観察入院の割合を二次評価項目とした。

出典:Shutterstock

結果、テレヘルスによるフォローアップは、対面でのフォローアップと比較して、EDの再受診については患者1,000人あたり28.3人の増加と、再入院については同10.6人の増加に関連していた。対面診療によるフォローアップの場合、30日以内のED再受診率は16%、入院率は4%だった。一方、テレヘルスによるフォローアップでは、30日以内に18%がDEを再受診し、5%が入院していた。

研究班は、「人口統計学的特性、加入する保険プランの種類、EDセンターまでの距離、疾病の重症度、ED利用時からフォローアップまでの時間、ケアの複雑さなどの各因子について調整した後でも、テレヘルスによるフォローアップを受けた患者は、EDを再受診する傾向が高かった」と記している。
研究班は、この分析にはいくつかの限界があると指摘している。まず、無作為化試験ではなくEHRデータに基づく観察研究であるため、失業、収入、医療制度への信頼の度合いなど、EHRでは収集されない情報が欠落している可能性がある。また、患者が研究対象とされた医療システム以外のプライマリケア医にかかった可能性も考えられるが、こうしたケースは同分析では追跡が不可能である。

米国では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックを背景としてテレヘルスの利用が急増した。民間保険のほか、公的保険を監督するメディケア・メディケイド・センター(CMS)も、テレヘルスに対するメディケア償還の規制を緩和し、これがテレヘルス利用件数の拡大に寄与した。COVID-19のパンデミック中は、こうした規制の緩和によって、感染拡大を防ぎながらメディケア受給者の健康維持を図ることができるというテレヘルスの利便性が大いに発揮された。しかしながらこの研究は、ED利用後のケアをテレヘルスで実施することについて懸念を示すものとなった。研究者は、テレヘルスの利用については、慢性疾患の管理など、利用シーンごとにその利点について考慮した上で決定されるべきだと指摘した。

テレヘルスによるフォローアップ後にED利用が増加する理由として考えられるのは、臨床医の(オンラインでの)診察能力における本質的な限界だ、と研究班は記している。つまり、オンラインで患者を診察していて何らかの症状が継続していることが確認された場合、医師は、対面診察を受けるために再びEDに患者を向かわせざるを得ないとうことだ。

(了)


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