2023/03/14

米国eHealthジャーナル第84号

フロリダ州のメディケイド、フォーミュラリーにPearの処方箋DTxを収載

ジャーナル第84号, 行政・規制ニュース, デジタルセラピューティクス, 物質使用障害, 医療機器, 薬局, 提携

メディケイドプログラムを通じてDTxのアクセスを拡大

処方箋デジタル・セラピューティクス(DTx)の開発に特化するPear Therapeutics(以下、Pear)は1月18日、同社の処方箋DTx である「reSET」と「reSET-O」がフロリダ州メディケイドプログラムの優先医薬品リストに追加されたと発表した。メディケイドは主に貧困層を対象とする連邦保険プログラムで、運営は各州政府が担っている。

PearはDTxのパイオニア企業として知られている。同社は、物質使用障害(SUD)患者の治療を適応として2017年9月にFDA承認を獲得したreSET、オピオイド使用障害(OUD)患者による外来治療プログラム継続率の向上を目的に2018年12月にFDA承認を受けたreSET-O、慢性不眠症患者の治療を適応に2020年3月にFDA承認を受けた「Somryst」の3種類の処方箋DTxを販売している。また、2021年11月には、アルコール使用障害(AUD)を適応症として開発中の処方箋DTx候補、「reSET-A」について、FDAから画期的医療機器指定を獲得している。

出典:Shutterstock

Pearのチーフ・コマーシャル・オフィサーであるJulia Strandberg氏は、「依存症の危機に対処し、回復を求める人々に革新的な治療オプションをもたらす取り組みの一環として、フロリダ州がreSETとreSET-Oを採用したことを嬉しく思う」と述べた。1月中に同州の約500万人のメディケイド受給者にreSETとreSET-Oへのアクセスが提供される。

Pearによると、同社のマーケットアクセス戦略が功を奏し、主に各州のメディケイドプログラムを通じて同社の処方箋DTxへのアクセスを患者に提供する州が拡大している。Pearは2022年11月にはウィスコンシン州保健サービス局と契約を結び、同州メディケイドの外来プログラムの下で依存症患者にサービスを提供するプロバイダーにreSETとreSET-Oを提供し始めた。同じく11月には、カリフォルニア州保健サービス局(DHCS)からも契約を獲得。 DHCSとの契約でPearは、同州のメディケイドプログラムMedi-Calに加入する、精神刺激薬使用障害(stimulant use disorder)患者に対して動機付けインセンティブを提供するパイロットプログラムを実施する。プログラムは2023年第1四半期中に開始される予定だ。

また1月初旬にはSpero Health(以下、Spero)との既存提携を拡大し、インディアナ州、ケンタッキー州、オハイオ州、テネシー州、ウエストバージニア州、バージニア州にSperoが擁する99カ所の外来治療オフィスでreSETと reSET-Oを提供すると発表している。Speroは、OUDやSUDなどに罹患する患者を対象として、外来オフィスベースで依存症からの回復ケアを提供する米国最大の医療サービスプロバイダー。
2022年にはデジタルヘルス業界では多くのレイオフが行われたが、特別買収目的会社(SPAC)との合併で2021年12月にナスダック上場を果たしたPearも無関係ではなく、7月の証券取引委員会(SEC)提出資料では、フルタイム従業員の約9%にあたる約25名をレイオフすることを明らかにしている。

(了)


本記事掲載の情報は、公開情報を基に各著者が編纂したものです。弊社は、当該情報に基づいて起こされた行動によって生じた損害・不利益等に対してはいかなる責任も負いません。また掲載記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。
Copyright © 2023 株式会社シーエムプラス LSMIP編集部

連載記事

執筆者について

関連記事