2023/06/27
米国eHealthジャーナル第90号
BoehringerとClick、DTxのフェーズIII試験開始
Boehringer Ingelheim, デジタルセラピューティクス, Click Therapeutics, 精神疾患, ジャーナル第90号
統合失調症の陰性症状に対する有効性を検証
デジタルセラピューティクス(DTx)の開発に特化するClick Therapeutics(以下、Click)は5月4日、ドイツの製薬大手Boehringer Ingelheim(以下Boehringer)と共同開発するデジタルセラピューティクス(DTx)のフェーズIII臨床試験の開始を発表した。
期間16週間の「CONVOKE」と呼ばれるピボタル無作為化多施設試験は、抗精神病薬を用いた統合失調症の標準ケアの補助療法として開発中である2件のDTxについて、その安全性と陰性症状に対する有効性を検証するもので、18歳以上の統合失調症患者432名を対象として実施される。
BoehringerとClickは2020年から提携関係にあり、統合失調症を適応症とした処方箋DTxの開発と商業化で協力している。統合失調症患者の約半数は精神面と行動面での障害を併発し、治療ガイドラインでは患者ごとに個別化された心理社会的介入療法が推奨されているものの、こうした介入療法へのアクセスは十分でない。両社は、心理社会的介入療法へのアクセス不足による統合失調症患者の満たされないニーズが大きいことに着目。認知および神経行動学的メカニズムを基盤とするClick独自のエンゲージメント・プラットフォームを活用し、統合失調症患者の認知障害と社会機能障害の改善を目指している。
Clickによると、既存の統合失調症治療薬は陽性症状である幻覚や会話障害、精神的動揺などを適応症とする。意欲の低下やうつ状態など陰性症状は標準治療薬での効率的な対処が難しく、陰性症状を適応症にFDAが承認した薬剤や医療機器もまだ無い。
ニューヨーク州ニューヨーク市に本社を置くClickは、禁煙、大うつ病、統合失調症、不眠症、急性冠症候群、片頭痛、肥満、アトピー性皮膚炎などを含む、さまざまな適応症で新規DTxを開発している。同社は2016年4月に禁煙アプリの「Clickotine(開発番号CT-101)」をリリース。Clickotineの利用に処方箋は必要なく、誰でも無料でダウンロードすることが可能だ。Clickotineは有料のオプションを追加することによりアプリの機能を拡大できる。Clickoine有料版は一部の民間および公的保険でカバーされており、保険が適用される場合、ユーザーの費用負担はない。Clickは2022年12月には、18歳以上の反復性片頭痛患者における片頭痛予防を適応に補助療法として開発中のCT-132について、FDAから画期的医療機器指定を受けている。
出典:Click
(了)
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