2023/07/11
米国eHealthジャーナル第91号
Hippocratic AI、シードラウンドで5,000万ドルを調達
Hippocratic AI, ジャーナル第91号, VC投資・M&A・決算, 言語技術, AI技術
ケアアクセスの拡大と医療従事者の供給と可用性を向上させる生成系AI
ヘルスケア向け大規模言語モデル(LLM)の開発に特化するHippocratic AIは5月16日、シードラウンドで5,000万ドルを調達したと発表した。この資金調達ラウンドはGeneral CatalystとAndreessen Horowitzが共同で主導した。
カリフォルニア州パロアルトを拠点とするHippocratic AIは、病院管理者、医師、メディケア専門家、そして、半導体メーカーのNvidia、Johns Hopkins University、Washington University(St. Louis)、University of Pennsylvania、Stanford University、Google出身のAI研究者からなるチームによって設立されたスタートアップ。人工知能(AI)の1つで、ジェネレーティブAI(生成系AI)とよばれる次世代AIに特化している。
生成系AIは、コンテンツやモノについてデータから学習し、それを使用して創造的かつ実用的な、そして、まったく新規のオリジナルのアウトプットを生成する新規の機械学習手法。2022年11月にリリースされたOpenAI 開発の大規模言語処理モデル、ChatGPTは代表的な生成系AIである。
Hippocratic AIの共同創業者でCEOのMunjal Shah氏は、ビジュアル検索エンジンLike.comの創業者で、Like.comは2010年にGoogleに買収された。今回のシードラウンドを主導したAndreessen HorowitzもLike.comに投資していた。 Shah氏はLike.comの他にも、健康スコアを開発するHealth Equity Labsや、高齢者の健康データをレビューしてメディケア・アドバンテージ(MA)プラン選択を支援するAI対応プラットフォームのHealth IQなど、数多くの企業を共同設立している。
Hippocratic AI が開発したLLMモデルは、専門医(各専門科のSpecialty Boardによる認定試験)や、看護師、薬剤師の資格試験を含む100種類の医療系資格試験をクリアし、その精度はOpenAIのGPT-4や他の商用LLMモデルの性能を凌駕しているという。
Hippocratic AIが構築するヘルスケア向けの大規模な言語モデルは、当初は診断を目的としない、患者向けのアプリにフォーカスしている。その目的は、医療費の削減、ケアアクセスの拡大、医療従事者の「供給と可用性」の向上にあるという。「ヘルスケア業界は、労働力を強化し、燃え尽き症候群を減らし、患者経験を改善することにフォーカスした独自のAIプラットフォームを必要としている。Hippocratic AIは、医療従事者の供給とスケーラビリティを抜本的に強化することを目標としている。これは、よりプロアクティブで、より安価な、そして、すべての人に公平なケアを提供するヘルスケアシステム実現の鍵となるものだ」と、General CatalystのCEO兼マネージングディレクターであるHemant Taneja氏は声明で述べた。
生成AIツールや大規模な言語モデルは、ヘルスケアにも進出している。Googleは4月、同社の医療用大規模言語モデルである「Med-PaLM 2」を数週間以内に一部のGoogle Cloud顧客に提供すると発表した。フィードバックを共有し、使用例を検討するという。Med-PaLM 2は、医学的な質問に回答する生成系AI。
また、GPT-4の医療分野での利用についても、多くの検討と議論がなされており、一部の専門家は、すでに臨床現場で効果を上げていると述べている。Cleveland Clinic(オハイオ州クリーブランド)の心血管疾患専門医を中心とする研究班が実施した、医療分野におけるChatGPTの利用検証では、ChatGPTが心血管疾患の予防に関する質問に対して「概ねにおいて適切な」回答をしたことが示された。同研究論文「Appropriateness of Cardiovascular Disease Prevention Recommendations Obtained From a Popular Online Chat-Based Artificial Intelligence Model」は2023年2月3日付で米国医師会雑誌(JAMA)オンライン版に掲載された。
(了)
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