2023/05/23
米国eHealthジャーナル第88号
FDA、Masimoの オピオイド過剰摂取アラートシステムを承認
行政・規制ニュース, 疾病管理・患者モニタリング, ジャーナル第88号, 物質使用障害, Masimo
リスクのレベル上昇に応じて異なるアラートを提供
カリフォルニア州アーバイン拠点のメドテック企業Masimoは4月3日、 オピオイド過剰摂取防止アラートシステムの「Opioid Halo」がデノボ(de novo)申請経路でFDAから承認を受けたと発表した。デノボは、安全性リスクが低~中程度で、実質的に同等な製品が存在しない革新的医療機器を対象とする承認申請経路。
Opioid Haloは、オピオイドによる疼痛治療を受ける患者がオピオイド誘発性の呼吸抑制を起こしかけている際に、家族や介護者に警告することで過剰摂取を防止することを目的としている。急性疼痛や長期間続く慢性疼痛に対して鎮痛薬として用いられる医療用麻薬のオピオイドは、脳幹(延髄)の呼吸中枢に存在するμ受容体に作用すると、呼吸活動の低下を引き起こし動脈血二酸化炭素(CO2)濃度を上昇させる。 オピオイドの過剰摂取はしばしば、致命的となりうる呼吸の低下や停止をもたらす。
Opioid Haloは、1)穿刺不要の指先センサー、2)再利用可能なBluetooth対応パルスオキシメーター、3)家庭用メディカル・ハブ、4)スマートフォンアプリの4つの要素で構成される。指先センサーとパルスオキシメーターは、動脈血酸素飽和度(SpO2)と脈拍数を正確に測定する同社独自の「Signal Extraction Technology」とパターン認識アルゴリズムにより、ユーザーが動いていたり、手の冷えや皮膚の色素沈着などの条件下でも、オピオイド誘発性呼吸抑制のリアルタイムモニタリングを可能にする。ユーザーデータは、メディカル・ハブとスマートフォンアプリにワイヤレスで中継される。アプリは、ユーザーの生理学的データを継続的に分析し、オピオイド誘発性呼吸抑制イベントに関連するトレンドやパターンを見つけ出し、過剰摂取のリスクを定量化する。
アプリとハブは、リスクのレベルに応じて異なる種類のアラートを提供する。初期段階においては、聴覚・視覚的なアラームを発することで、ユーザー自身によるリスクへの対応、あるいは他者に助けを求めることを促し、早期介入を実現する。リスクスコアが上昇し続けると、ユーザーへのアラームの繰り返しに加え、指定した友人や家族に自動テキストを送信し、ナロキソンの投与などによる介入の必要性があることを知らせる。さらに、事前にオプションを追加設定しておくことにより、リスクレベルがさらに進行した場合には、サービスセンターがユーザーにウェルネスコールを自動発信し、必要に応じて救急隊が派遣される。
Masimoによると、Opioid Haloは、15歳以上の患者を対象としたOTC製品として承認された。同社では、処方箋を必要とするバージョンも提供している。Masimoの創業者兼CEOであるJoe Kiani氏は、「オピオイド危機と戦う人々やコミュニティにOpioid Haloを提供できることを非常にうれしく思う。オピオイド危機は、特に若者への影響が非常に大きく、米国全体の平均寿命を引き下げている。オピオイドの使用で苦しむ人々に、必要なツールを提供することで、大きな変化をもたらすことが期待される」と話す。
(了)
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